相続した実家について、「早く売るか決めなければ」「片付けや登記は、どの順番で進めればよいのだろう」と戸惑う方は少なくありません。
相続直後は、家族の気持ちが落ち着いていなかったり、実家の状態や必要な手続きが分からなかったりする時期です。その段階で、売却という結論まで急いで出さなければならないとは限りません。
一方、売るかどうかを決めていなくても、相続人や名義、書類、家の状態、管理方法などは確認できます。
売却準備は、売却すると決めた後に一度に始めるのではなく、相続後、無理のない範囲で状況確認から始めることができます。
この記事では、相続後から売却方針を決めるまでの「準備期間」にできることを、順番に整理します。
相続後すぐに売却を決めなければならないとは限りません
相続した実家には、売るほかにも、家族が使う、貸す、当面は空き家として管理するといった選択肢があります。
家族の意向や家の状態が分からないうちに、結論を一つに絞る必要はありません。
まずは、次の二つを分けて考えると整理しやすくなります。
- 今すぐ決めなくてもよいこと:売る・貸す・残すといった最終的な方針
- 結論が出る前から確認できること:相続人、名義、書類、建物の状態、管理方法、維持費など
ただし、「すぐに売らない」と「何もしない」は同じではありません。
郵便物の確認、換気、通水、積雪への対応など、家を傷めないための管理は必要になる場合があります。また、相続登記や税金の制度には期限が関係することがあるため、該当する手続きは個別に確認しましょう。
選択肢全体を比べたい方は、実家を売る・貸す・残す?決める前に比べたいことも参考にしてください。
売却を決める前でも確認できる7つのこと
1.相続人と家族の意向
最初に、誰が相続人になる可能性があるのか、家族が実家を今後どうしたいと考えているのかを確認します。
例えば、家族の中に住みたい人がいる、しばらく荷物を保管したい、売却には賛成だが時期について意見が違う、といった事情があるかもしれません。
結論を急ぐよりも、現時点で一致していることと、まだ決まっていないことを分けておくと話し合いやすくなります。
相続人が多い場合や連絡が取れない人がいる場合は、早めに司法書士や弁護士などへ確認した方がよいこともあります。個別の権利関係や必要な同意は、状況によって異なります。
2.土地と建物の名義
固定資産税の書類や登記事項証明書などを手がかりに、土地と建物の登記名義を確認します。
土地と建物で名義が違う、複数人の共有になっている、以前の相続登記が終わっていない、といったケースもあります。
法務省の案内によると、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されています。
原則として、相続の開始があったことと、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。
2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象になるため、未登記の不動産がある場合は期限を個別に確認しましょう。
期限の計算や個別の適用については、司法書士または法務局へ確認してください。
売却をまだ決めていなくても、登記の確認や司法書士への相談は進められます。詳しくは、相続登記をしていない実家は売れる?をご覧ください。
3.遺言書や遺産分割の状況
遺言書の有無や、遺産分割についてどこまで話し合いが進んでいるかを確認します。
遺言書が見つかった場合、その種類や保管状況によって手続きが異なることがあります。内容を自己判断で処理せず、必要に応じて家庭裁判所、司法書士、弁護士などへ確認しましょう。
まだ遺産分割がまとまっていない場合でも、家の現況確認や維持費の把握など、方針を決める材料集めはできます。
ただし、誰か一人の判断だけで売却や処分を進められるとは限りません。
4.権利証、固定資産税、保険などの書類
実家に関係する書類を、一か所に集めて確認します。
- 登記識別情報通知や権利証
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書や課税明細書
- 火災保険、地震保険などの保険証券
- 建築確認、検査済証、設計図、測量図など
- 購入時や増改築時の契約書、領収書
- 修繕や設備交換の記録
- 住宅ローンや抵当権に関係する書類
すべてが揃っていなくても、相談を始めることはできます。
見つからない書類がある場合は、何が不足しているかをメモしておくだけでも次の確認につながります。
5.建物、設備、荷物の状態
実家へ行ける場合は、雨漏り、傾き、破損、水回り、給湯、暖房、電気、灯油設備などの状態を、分かる範囲で確認します。
室内の家具や家電、物置、庭、車庫に残っている物も記録しておきましょう。
写真や動画を残しておくと、遠方にいる家族とも状況を共有しやすくなります。自分たちだけで建物の安全性や修繕の要否を判断する必要はありません。
この時点で片付け、修繕、リフォーム、解体を終わらせる必要はありません。
売り方や残し方によって必要な作業が変わるため、大きな費用をかける前に不動産会社や専門業者へ相談する方法もあります。
6.空き家の管理方法と維持費
売却方針が決まるまでの間も、固定資産税、保険、電気や水道、除雪、庭木の手入れなどの負担が続くことがあります。
まずは、現在かかっている費用と、誰が支払っているかを一覧にします。
そのうえで、誰が現地を確認するか、どのくらいの頻度で訪問するか、遠方の場合は誰へ依頼するかを決めておくと安心です。
維持費の整理は、空き家になった実家の維持費はいくらかかる?で詳しく案内しています。
空き家管理全体について確認したい方は、空き家の管理で困ったときの対処法も参考にしてください。
7.今後の利用予定と、次に話し合う時期
家族が住む可能性、貸す可能性、荷物を整理できる時期などを確認します。
今すぐ結論が出ない場合は、「いつまでに決めるか」ではなく、「次にいつ話し合うか」を決めるだけでも構いません。
例えば、四十九日や相続手続きが一段落した後、冬になる前、次に家族が集まる日など、状況に合う時期を設定します。
保留にする場合も、管理担当と次回確認日を決めておけば、放置を防ぎやすくなります。
相続登記、片付け、査定はどの順番で進める?
すべての実家に共通する一つの順番があるわけではありません。
手続きの確認、家族との話し合い、家の現況確認、査定などは、並行して進められることがあります。
一例として、次のように整理できます。
| 段階 | 確認・準備できること | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 早めに確認 | 相続人、遺言書、登記名義、家の管理 | 相続登記など期限のある手続きは放置しない |
| 方針を考える材料集め | 建物・土地の状態、維持費、家族の予定、査定 | 査定額だけで方針を決めない |
| 費用をかける前 | 片付け、修繕、解体が本当に必要か相談 | 作業後に元へ戻せないこともある |
| 売却へ進む場合 | 必要書類、売却方法、条件、手続きの確認 | 所有権移転までに必要な登記等を専門家へ確認 |
相続登記が終わる前でも、不動産会社へ相談したり、査定を依頼したりできる場合があります。
ただし、実際に売買契約や所有権移転へ進むために必要な手続きは、物件と相続の状況によって異なります。
また、実家の荷物が残っていても相談できることがあります。
「全部片付けてから」「修繕してから」と決めつけず、現状のまま相談し、選択肢を確認してから費用をかける順番をおすすめします。
まだ売却を決めていない段階で査定を受けるときの考え方
査定は、売却を決める手続きではなく、判断材料を集める方法の一つです。
おおよその価格や考えられる売り方を知ることで、残す場合の維持費や家族の希望と比較しやすくなります。
査定を受けるときは、次の点を確認しましょう。
- 査定額の根拠と前提条件
- 建物を現状のまま扱った場合の考え方
- 片付け、修繕、解体の要否
- 仲介と買取など、提示された方法の違い
- 売却を急がない意向が伝わっているか
査定額は、実際にその金額で売れることを保証するものではありません。また、査定を依頼しただけで、売却や媒介契約を決める必要もありません。
査定だけ依頼することへの不安がある方は、家の査定だけお願いしても大丈夫?も参考にしてください。
すぐに売らない場合は空き家管理を先送りしない
売却を保留にすることはできますが、実家の管理まで保留にすると、建物の傷みや近隣への影響に気づきにくくなります。
確認したい内容は、次のとおりです。
- 郵便物や重要な通知の確認
- 火災保険などの契約内容と連絡先
- 電気、水道、ガス、灯油設備の扱い
- 換気、通水、漏水、雨漏りの確認
- 庭木、落ち葉、害虫などへの対応
- 除雪、屋根雪、落雪への対応
- 緊急時に連絡を受ける人
札幌・北海道では、冬季の水道凍結や積雪、暖房設備の管理が必要になる場合があります。
住宅の構造や設備、使用状況によって対応は異なるため、「誰が、いつ、何を確認するか」を家ごとに決めましょう。
冬季管理については、札幌で冬の空き家を管理するには?も参考になります。
保険やライフラインは、契約先へ現在の使用状況を伝え、継続・変更・停止の扱いを確認してください。
専門家へ確認した方がよいケース
次のような場合は、家族だけで結論を出さず、内容に応じた専門家や行政窓口へ確認すると安心です。
- 相続人や共有者の範囲が分からない
- 遺言書の扱いや遺産分割がまとまっていない
- 相続登記が終わっていない、過去の名義が残っている
- 所有者本人の意思確認が難しい
- 未登記建物、境界、抵当権などに不明点がある
- 相続税、譲渡所得、特例、申告期限が関係しそう
- 建物の安全性や修繕の必要性を判断できない
登記は司法書士、税金は税理士や税務署、相続人間の紛争や法的判断は弁護士などが主な確認先になります。
空き家に関する行政上の相談先は、札幌市の空き家対策に関する案内でも確認できます。
相続した空き家の売却に関する税の特例には、売却時期を含む複数の要件があります。
国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を確認したうえで、利用できるかどうかは税理士や税務署へ相談してください。
物件、相続、利用状況などによって適用の可否が変わるため、すべての相続した実家に利用できる制度ではありません。
売却準備の確認チェックリスト
すべてにチェックが付いていなくても、相談はできます。分からない項目を見つけるための一覧として使ってください。
- ☐ 相続人になる可能性がある人を確認した
- ☐ 家族それぞれの意向を聞いた
- ☐ 土地と建物の登記名義を確認した
- ☐ 遺言書や遺産分割の状況を確認した
- ☐ 固定資産税、保険、登記関係の書類を集めた
- ☐ 建物、設備、荷物の状態を記録した
- ☐ 現在の維持費を確認した
- ☐ 売却を保留する間の管理担当を決めた
- ☐ 大きな費用をかける前に選択肢を確認した
- ☐ 査定額と実際の売却価格は同じとは限らないと理解した
- ☐ 期限が関係しそうな登記や税金を専門家へ確認した
- ☐ 次に家族で話し合う時期を決めた
まとめ|売却を決める前に、現在分かっていることを整理する
相続した実家は、相続後すぐに売却まで決めなければならないとは限りません。
売る、貸す、残す、当面管理するという選択肢を比べながら考えることができます。
ただし、結論を保留している間も、相続人、名義、書類、家の状態、維持費、管理方法は確認できます。
相続登記や税金など、期限が関係する可能性のある事項は、売却方針とは分けて早めに確認しましょう。
片付け、修繕、解体などへ先に大きな費用をかける必要があるとは限りません。現状のまま相談し、どの準備が必要かを確認してから進める方法もあります。
実家じまい相談室では、まだ売却すると決めていない段階でも、家族の状況、名義、家の状態、管理負担などの整理から相談できます。
遠方に住んでいる、家族の意見がまとまっていない、何から確認すればよいか分からないという段階でも大丈夫です。
すぐに結論を出すためではなく、現在分かっていることと分からないことを、一緒に整理するところから始められます。
お気軽にご相談ください
売ると決めていなくても、ご相談だけでも大丈夫です。
- 売却を急がせることはありません。
- ご相談だけでも歓迎しております。
- 仲介・買取のどちらにも対応しております。
- 必要に応じて、司法書士などの確認先を紹介またはご案内できる場合があります。
ご相談方法をお選びください
「売る」と決める前に、まずは状況整理から一緒に考えていきましょう。


