相続した実家を売却したくても、相続人が多いと、
「誰の同意が必要なのだろう」
「代表者が一人で手続きを進めてもよいのだろうか」
「連絡が取れない相続人がいる場合はどうすればよいのだろう」
と、手続きの進め方に迷うことがあります。
相続人が多い実家の売却では、最初から全員に売却の結論を求めるのではなく、まず名義と相続人を確認し、それぞれの意向を整理することが大切です。
順番に確認していけば、相続人が多い場合でも売却に向けて話を進められる可能性があります。
最初に実家の名義を確認する
まず確認したいのは、現在の実家の名義です。
登記事項証明書を取得すると、土地と建物の所有者を確認できます。
よくあるのは、次のような状態です。
- 亡くなった親の名義のまま
- 相続人の一人へ名義変更済み
- 複数の相続人による共有名義
- 以前の相続手続きが終わっていない
- 土地と建物の名義人が異なる
名義の状態によって、売却までに必要な手続きや同意を得る相手が変わります。
家族の中で「長男が実家を引き継いだ」と認識していても、登記名義が変更されていないこともあります。
まずは家族内の認識だけで判断せず、登記上の名義を確認しましょう。
相続人を戸籍から確認する
次に、誰が法律上の相続人になるのかを確認します。
親族の中で把握している人だけが、必ずしも相続人の全員とは限りません。
例えば、先に亡くなった子の子どもが相続人になる場合や、過去の戸籍を確認して初めて分かる相続人がいる場合もあります。
一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続関係を確認します。
相続人が多い場合や、転籍が繰り返されている場合は、戸籍の収集に時間がかかることがあります。
売却の話を本格的に進める前に、
- 誰が相続人なのか
- 相続人は何人いるのか
- 現在の住所や連絡先が分かるか
- 遺言書が残されていないか
を整理しておくと、その後の話し合いを進めやすくなります。
遺産分割協議では相続人全員で話し合う
遺言書などで実家の取得者が決まっていない場合は、相続人全員で遺産分割について話し合います。
この話し合いが遺産分割協議です。
遺産分割協議では、
- 実家を誰が相続するのか
- 実家を売却するのか
- 売却前の管理を誰が行うのか
- 片付けや登記などの費用をどうするのか
- 売却代金をどのように分けるのか
などを確認します。
相続人の一部を除いて作成した遺産分割協議書では、必要な相続手続きを進められない可能性があります。
そのため、相続人が多い場合ほど、最初に全員を確認することが重要です。
法務省も、不動産を相続した場合は遺産分割協議と相続登記を進めるよう案内しています。また、相続登記は2024年4月1日から義務化されています。法務省、札幌法務局
相続登記をしていない実家については、こちらの記事も参考になります。
全員の合意が必要になるケース
「不動産の売却には相続人全員の同意が必要」と聞くことがありますが、実際には名義や遺産分割の状況によって異なります。
遺産分割が終わっていない場合
亡くなった方の名義のままで、誰が実家を取得するか決まっていない場合は、相続人全員で遺産分割について協議する必要があります。
一人を除いたまま売却の結論を出すことはできません。
一人が実家を相続した場合
遺産分割協議によって一人が実家を相続し、その人への相続登記が完了した後は、原則として登記名義人が売主になります。
ただし、売却代金の分配やほかの相続財産との調整については、遺産分割の内容を明確にしておく必要があります。
複数人の共有名義になっている場合
実家全体を売却するには、原則として共有者全員の合意と手続きへの協力が必要です。
代表者が窓口になることはできますが、代表者だけで実家全体の売却を決定できるわけではありません。
代表者だけで勝手に決めることはできない
相続人が多い場合、連絡や手続きをまとめる代表者を決めることがあります。
代表者を決めること自体は、話を進めるうえで有効です。
代表者は、
- 不動産会社との連絡
- 査定書や資料の共有
- 相続人への状況報告
- 片付けや管理方法の調整
- 司法書士などとの連絡
を担当できます。
ただし、代表者になったからといって、ほかの相続人の意向を確認せずに売却価格や売却先を決められるわけではありません。
代表者は「一人で決定する人」ではなく、「情報を集約して全員へ共有する人」と考えるとよいでしょう。
必要に応じて委任状を用意することもありますが、委任する内容は具体的に確認する必要があります。
まずは相続人それぞれの意向を整理する
相続人が多いと、一度に全員で話し合おうとしても、それぞれが本音を話しにくいことがあります。
実務では、最初に相続人それぞれから別々に話を聞いた方が、状況を整理しやすいケースがあります。
例えば、
- できるだけ早く売却したい
- 思い出があり、すぐには売りたくない
- 売却には反対ではないが価格が心配
- 片付けや費用負担ができない
- 遠方に住んでおり、手続きへの参加が難しい
- ほかの相続人との直接の話し合いを避けたい
など、同じ「売る」「売らない」という意見の中にも、異なる事情が隠れているからです。
私が相続人の多い実家について相談を受ける場合も、必要に応じてそれぞれから個別に話を聞き、希望や不安を整理することがあります。
一人ずつ話を聞くことで、対立しているように見えても、
「適正な価格が分かれば売却してもよい」
「片付けの負担が少なければ進めたい」
など、共通点が見つかることもあります。
最初から多数決で結論を出そうとせず、それぞれが何を心配しているのかを確認することが大切です。
兄弟間の話し合いについては、こちらの記事も参考になります。
連絡が取れない相続人がいる場合
相続人の一人と連絡が取れないからといって、その人を除いて遺産分割や売却を進めることはできません。
ただし、「連絡が取れない」といっても状況はさまざまです。
- 電話番号やメールアドレスが分からない
- 手紙を送っても返事がない
- 親族と長期間交流がない
- 現在の住所が分からない
- 行方不明で所在を確認できない
まずは戸籍や戸籍の附票などを確認し、現在の住所を調査できるか検討します。
住所が分かっていても返事がない場合と、所在そのものが分からない場合では対応が異なります。
本当に行方が分からない場合には、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てる方法などが検討されます。不在者財産管理人が遺産分割や不動産売却を行う場合は、家庭裁判所の許可が必要になることがあります。裁判所「不在者財産管理人選任」
個別の状況によって必要な手続きが変わるため、司法書士や弁護士などへ早めに相談した方がよいケースです。
意見がまとまらない場合の進め方
相続人全員と連絡が取れていても、売却や分け方について意見がまとまらないことがあります。
そのようなときは、まず争点を分けて整理します。
例えば、
- 売却そのものに反対しているのか
- 売却価格に不安があるのか
- 査定方法に納得していないのか
- 家財や思い出の品が気になっているのか
- 売却代金の分け方に不満があるのか
- これまでの管理費用を精算したいのか
によって、必要な対応が変わります。
複数の不動産会社から査定を取り、価格の根拠を共有することで話が進む場合もあります。
一方、当事者間で遺産分割の話がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を検討することがあります。調停では、各相続人の意向や資料を確認しながら、合意を目指して話し合いが進められます。裁判所「遺産分割調停」
最初から裁判所での手続きを前提にする必要はありませんが、話し合いが難しい状態を長期間放置しないことも大切です。
実家を売るか残すかで迷っている場合は、こちらの記事も参考になります。
売却代金の分配は事前に確認する
実家を売却した後の代金をどのように分けるかについても、売却前に確認しておきましょう。
確認したい項目には、次のようなものがあります。
- 売却代金の分配割合
- 仲介手数料
- 登記費用
- 測量費用
- 解体費用
- 家財処分費用
- 固定資産税などの精算
- これまで管理費用を負担した人への精算
- 売却に伴う税金
売却代金を一人の代表者の口座で受け取ってから分配する場合もありますが、分配方法によっては税務上の確認が必要になることがあります。
また、共有名義で売却する場合には、それぞれの持分や契約内容に応じた受領方法を確認します。
「売れた後で相談すればよい」と考えず、売却前に司法書士、税理士、不動産会社などへ確認しておくと安心です。
相続した空き家の特別控除は、家屋や敷地を取得した相続人が3人以上の場合、控除上限が異なることがあります。詳しくは、相続空き家の3,000万円特別控除の要件と注意点をご確認ください。
相続登記などを司法書士や法務局へ確認する場面
相続人が多い実家の売却では、不動産会社だけで対応できない手続きもあります。
司法書士へ相談する場面
- 相続登記が終わっていない
- 相続人を戸籍から確認したい
- 遺産分割協議書の作成について確認したい
- 共有名義を整理したい
- 売却時の所有権移転登記を進めたい
弁護士へ相談する場面
- 相続人同士の対立が大きい
- 遺産分割協議が進まない
- 連絡を拒否している相続人がいる
- 遺言書の有効性などについて争いがある
- 家庭裁判所の手続きを検討している
税理士へ相談する場面
- 売却後の税金を確認したい
- 売却代金の分配方法に不安がある
- 相続税の申告が必要か確認したい
- 相続人間の金銭移動について確認したい
最初からすべての専門家へ個別に連絡する必要はありません。
まず現状を整理し、どの手続きに誰の協力が必要なのかを確認すると進めやすくなります。
相続人が多い実家を売却する基本的な流れ
相続人が多い場合は、次の順番で進めると整理しやすくなります。
- 登記事項証明書で現在の名義を確認する
- 戸籍などから相続人を確認する
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人それぞれの意向を整理する
- 査定を行い、売却価格の目安を共有する
- 遺産分割や売却条件について話し合う
- 必要に応じて相続登記を行う
- 売却活動を開始する
- 売買条件について相続人・共有者の確認を取る
- 売却代金や費用を取り決めに従って精算する
この順番は、状況によって前後することがあります。
大切なのは、名義や相続人が分からない状態で、売却だけを先に進めようとしないことです。
よくある質問
相続人の一人が反対していても、多数決で売却できますか?
遺産分割が終わっていない場合や、複数人の共有名義になっている実家全体を売却する場合は、単純な多数決では進められません。
まず反対している理由を確認し、価格、管理負担、分配方法などを整理する必要があります。
代表者一人が不動産会社と話を進めてもよいですか?
連絡窓口として査定や相談を進めることは可能です。
ただし、代表者だけで売却条件や契約を決定できるとは限りません。ほかの相続人や共有者への情報共有と意思確認が必要です。
相続登記をしていない状態でも査定できますか?
査定や売却相談は、相続登記前でも可能です。
ただし、実際に買主へ所有権を移転するまでには、相続関係を整理し、必要な登記を完了させる必要があります。
連絡が取れない相続人を除いて手続きできますか?
原則として、その人を除いた遺産分割協議はできません。
住所の確認や連絡方法を検討し、所在不明の場合は家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。
売却代金は法定相続分で分けなければなりませんか?
遺言書、遺産分割協議、登記名義、売買契約などによって取り扱いが異なります。
売却後に分配方法でもめないよう、売却前に司法書士や税理士へ確認し、書面で整理しておくことをおすすめします。
まとめ
相続人が多いときは、最初から売却の結論だけを求めず、実家の名義、相続人、遺言書の有無を確認することが大切です。
相続人それぞれの希望や不安を個別に整理し、売却条件、費用負担、売却代金の分配方法を共有すると、話し合うべき点が見えやすくなります。
名義、相続登記、遺産分割、実家の管理なども含めて全体の進め方を確認したい方は、実家じまい総合ガイドをご覧ください。
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相続人が多く、どこから話を始めればよいか分からない場合は、売却を決める前の相談でも大丈夫です。
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- 売却を急がせることはありません。
- ご相談だけでも歓迎しております。
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- 必要に応じて、司法書士などの確認先を紹介またはご案内できる場合があります。
ご相談方法をお選びください
「売る」と決める前に、まずは状況整理から一緒に考えていきましょう。


